「不登校」をしている時間が育む力とは?自分で判断する経験が、未来を生きる力になる。

October 2, 2018

 止まり木マップにもいくつかのフリースクールが登録されています。

 「フリースクールってどんな場所?」「居場所ってどんな場所?」そこをみたことのない方からよく聞かれる質問です。また「学校に行かない時間は、子ども達にとって何を育てている時間なのか?」親という立場からも、長く不登校の子達を見てきた人に聞いてみたい、という私自身の想いもありました。

 

 そんな想いから、はじめは止まり木マップの紹介記事から派生したものでしたが、フリースクール全国ネットワーク代表理事でもあり、フリースクールスタッフ養成講座の講師もされている江川和弥さんから、ご自身が運営されている『寺子屋方丈舎』のみならず、フリースクールについて、不登校の子達が持つ力について、スタッフや親など周りの大人の在り方について、たっぷりと語っていただきました。

 

 フリースクールを知らない人にも、不登校児の親御さん、ホームスクーリングを楽しまれている親御さん、フリースクールスタッフ、多様な学びに関心のある方などなどにも、読み応えのある記事になったかと思っています。

(聞き手:多様な学びプロジェクト代表・生駒知里)

 

●自分自身の不登校経験が契機となって

 

 

今日はよろしくお願いします。最初に、寺子屋方丈舎をはじめられたきっかけを教えていただけますか?

 

 

江川)最初は27歳から7年間ほど、行政の適応指導教室のスタッフをやっていたんです。自分自身も学校に行かない不登校の経験があったので、学校に行かない子達の為に何かをやりたいという気持ちと、あとはまだ20代だったから、自分はなんで学校に行かなかったんだろう?自分を知りたい、そういう気持ちもあったと思いますね。

 

 適応指導教室時代も、僕が来る前、元教員の方がやっているときは子ども達が寄り付かない場所だったらしく、僕がスタッフになってから子ども達がよく来てくれるようになったそうです。2人のスタッフで17,8人の子達が来ていましたよ。

 

 

最初は自分探しもあったんですね!適応指導教室のスタッフを辞めてフリースクールを立ち上げられたのには理由があるんですか?

 

 

江川)34歳でフリースクールを立ち上げたんですが、フリースクールを始めた理由の1つ目は、行政の適応指導教室だと、受け入れたくても受け入れられない子達の存在がありました。やっている自治体の枠を超えて入りたいと来たり、15歳までと決まっているけれど、16歳、17歳の子達もやってくる。受け入れたくても受け入れられない。そういう子達を受け入れたかったんです。

 

 

 もうひとつの理由は、『学校復帰』だけを考えると「学校にどうしたらいけるか」とか「学校に何日行けた」とか、目の前の問題だけが取り上げられるのも残念でした。

 

 不登校になると、学校に行かない時間はどう使ってもいい。せっかくだから自分自身を考える時間、社会と自分の繋がりを考える時間、そういう時間がご本人を育てていける貴重な時間だと僕は感じていました。『学校復帰』が前提にあると急かされてしまう。休んでいても休んでいる意味がない。ご本人なりに向き合っている時間を大切にしようよ、という思いがありました。


 

●複数事業経営で、保護者に負担が行き過ぎない工夫を

 

想いを持って始められた。とはいえ、行政から雇われている身と、ご自身でフリースクールを経営されるのだと、経営には苦労されたのではないでしょうか?

 国からの補助金がないフリースクールは経営に苦労しているところも多いと思うのですが、どうされていますか? 

 

 

江川)フリースクールを始めた当初は、この地域でフリースクールはうちしかありませんでしたね。塾なのか、勉強するのか、勉強しないのか、周りから見ると何なんだかよく分からない場所だったと思います。適応指導教室の子ども達がそのまま来てくれたことでスタートできました。

 

 今は常勤非常勤合わせてスタッフは15人、そのうちフリースクール担当が2名です。経営は複数の事業をやることで成り立つようにしています。

 

 学校に行っている子ども向けの週末に行う自然体験のキャンプ事業や、ボランティア主体の子ども食堂、放課後は被災自治体向けの学童保育の事業もやっています。

 

震災後の仮説住宅の子達向けの学習支援も、行政から委託を受けてやっていますし、今は通信高校も内部に入れているのでフリースクールに通いつつ、高卒の資格もとることができます。

 

フリースクールだけだと人数は多い時期もあるし、少ない時期もある。複数の事業をもつことで経営を安定させて、親御さんに金銭的な負担がゆきすぎない経営努力をしています。

 

 

●学校に通っている子と通っていない子が、共に居心地よくいられる居場所とは?

 

 

それはすごい努力ですね!スペースの二次利用、三次利用というのは、私たちのステッカー活動に通じるものがあります。

 

放課後の学童保育とフリースクールが一緒になることで、スタート時、学校に通っている子、通っていない子、どちらかからの不安の声はありませんでしたか?

 

 

江川)最初は学童保育の親御さんから不安の声も出ていました。ただ、フリースクールの子達は中高生が多く、その子達が小学生の子達と関わる姿を見て、異年齢の良さを感じ取ってもらったようです。今では親御さん達から信頼されています。

 

 フリースクールに通っている不登校の小学生の子達も、最初は何か言われるんじゃないかと不安だったようですが、学童保育の子達と放課後遊びながら、一緒に何かすることで分かりあえたようです。

 

 

一緒に何かをすること、実際に出会うことで不安が消えて行ったんですね。

 

 

江川)一緒に何かをするというのは本当に大きいですよ。大人は学校に行っている子と行っていない子を分けようとするけれど、分けないことの良さを理解してもらいたい。

 

とはいえ両方の立場の子達が心地よく過ごせるのは、スタッフの関わりも大きいのでしょうか?

 

 

江川)そうだと思います。あと、学校でも家庭でもない、『居場所』の良さは共通なんだと思いますよ。学校に行っていても行っていなくても。遊びや、お互いの関係性が中心の場です。誰かの役に立てている実感のある場なんです。

 

 

なるほど。子どもにとって、心が緩める場所、心が解放される場所、自分を発揮できる場所としての『居場所』は、学校に行っている行っていないに関わらず居心地のいい場所になっているんですね。

 

 

●親が孤立しやすくなっている

 

 

ところで江川さんは25年間以上不登校の現場に関わられていますよね。そのなかで、感じるところはありますか?

 

江川)子ども達は昔から変わらないが、子ども達を取り巻く状況には若干変化を感じますね。周囲の大人の不登校の子達への見方は、溝は前よりは埋まっている感じはあるけど、まだ腫れ物に触る感はある。学校に行っている子、行っていない子は、付き合ってみれば大きく変わらないんです。個人として見る見方が大切だと感じています

 

それと以前よりも、親御さんがが自分の課題をなかなかオープンにできない。家族間の対立だったり、葛藤だったりを抱え込みやすいように感じています。全国的に不登校の親の会の出席率もあまり高くないんですよね。

 

 

親の側がより孤立感を持ちやすい社会状況があると。

 

 

江川)親御さんにとっての居場所感も大切だなと思いますね。保護者の不登校への理解があることと、子どもの自己受容感は連動していると感じています。保護者自身が自分の子育ては間違っていないと肯定感を得られることが大事だと思います。

 

 

不登校への理解がある場所は親御さんにとっても居場所になっているんですね。

 

 

●子どもたちが語る、私の親の攻略法!

 

 

ーでは、フリースクールに来ている子達の変化はどういうものがありますか?

 

 

江川)友達ができて居場所感を感じられるようです。あとはじめはゲームばかりだったり、口数が少ない子が、ふとしたことで自分のことを話してくれますね。

 

面白いのは、『私の親の攻略法』を話してくれるときですね。

 

バイオリズムのよう親の気分が変わるとか、行かせようとするときは部屋に割とこもっていた方がいいとか。

教師が家庭訪問したときはどう撃退するか。親も教師も傷つけない断りかたがあるんだよとかね(笑)。先生が来たことは労ってあげるけど、私が学校に行くことは別だから、とかね。

 

親アルアル、教師アルアルを語り合ってますね。

 

 

それは面白い!不登校のお母さんが、夫や義実父母にどう理解してもらうのか情報交換しているのに似てますね!それに親御さんや教師の方の気持ちを傷つけない断り方とか、子供達は精神的に大人ですね!

 

 

江川)子ども達が大人を理解することは生命線なんです。親に見捨てられると行き場がない。親が100パーセント自分の味方なとき、そうじゃないとき、価値観のずれが出た時にどう自分を守るのか。ゲームの攻略を情報交換するかのように、不登校の時代をどう過ごすか情報交換していますね。

 

 

 

●フリースクールのスタッフの専門性から見る、親や周りの大人の在り方とは。

 

 

そうやって子ども達が自分の心のうちを吐露できるのがスタッフの専門性だと思いますが、フリースクールなどの『居場所』にいるスタッフの専門性は外からはなかなか分かりづらいように感じます。

スタッフの専門性はどういったところにあると思いますか?

 

 

江川「しないことをする」ことの重要さと、「待つこと」の大切さですね。子どもに一生懸命になればなるほど、できるだけ繊細に対応しよう、対応しようと行動します。それは一時的にスタッフは楽です。何か行動する方が楽なんです。でも結果的には自分の首を苦しめてしまう。すり減りやすい環境を作ってしまいます。

 

 

すり減りやすい環境とは?

 

 

江川)個々の子どもに寄り添おうとすると丁寧に対応しようとすると、細分化して個別対応になっていくんです。そうすると、子どもがスタッフに依存するようになっていく。「○○さんはこないだは一緒に遊んでくれたけど、今日は遊んでくれない」、とかね。

 

依存されるのはスタッフにとっては麻薬のようなものなんです。有用感を感じるから。でも、長い目で見るといいことではないと思います。

 

方丈舎では1週間に1回振り返りのミーティングを取るようにしています。そこで1週間の自分を振り返ったり、「今すり減らしてない?」と声を掛け合うことで、相互のフィードバックも行なっています。

 

スタッフの専門性は、自分の思いを素直に言うことを常に心がけていくことですね。自分の気持ちに素直に生きていることです。「もっと子どもの話を親身に聞かないといけないんじゃないか」とか、自分を殺して頑張り過ぎてしまうと、今度は子どもが自分の思い通りにならないときに子どもにストレスをぶつけてしまう。

 

だから子ども達がどんな姿を見せてもスタッフは淡々と活動していく。その淡々とさがスタッフの専門性だと思いますね。

 

それと、自分がいいと思ってやっていたことが子どもはどう感じるのか、子どもの声を素直に聞けるようになる。フィードバックを子どもからももらえるような対等性を身につけていることが、居場所のスタッフの専門性だと思います。

 

 

そういう在り方は、親にも通じますね。

 子どもが不登校になったばかりだと親も何かをしてあげなきゃと思ったり、行動してしまう。実は行動していることで親は楽だけど、子どもからすると自分の思いを飛び越えて行動されたり、本人が望んでいないことをやらされたりしてしまう。そういうことは私自身を振り返ってもあったなと思います(^_^;)。

 

 

江川)それは親子でも一緒だと思いますね。親御さんの方は子どもに比べて変化は遅いけど、フリースクールにきて子どもが落ち着くと親も落ち着くところもあると思います。

 

 

 

●みんなが一緒をやめていく、間違ってもいいから自分で判断することが、将来への力になる

 

 

親の不安というところでお聞きします。親の立場から見ると、不登校になった子達の将来の不安を(親側が)解消したいという本音があると思うんですが、方丈舎さんは通信制高校を内部に持っていたり、フリースクールで育ったOBが見えたりと、そういう意味では不安が解消されやすい環境にあると言えますか?

 

 

江川)たしかに単位は取れるし、高卒の資格をとれるのはメリットかもしれませんね。

ただ、どう社会に出ていくのか、というのはどの子にとっても不安です。

 

 私が大切だと思うのは、いい判断、悪い判断、そのどちらであっても引き受ける力だと思うんですよ。

 

 

引き受ける力?

 

 

江川)そう。この会社は合うと思ったけど合わない、というようなことは社会に出てからもありますよね。その時に、人のせいにしないで引き受ける力。それは自分の判断で決めていくからこそついてくるんです。

 

人の意見は参考になるけど、同じ人間はいないし、その場に立たないと分からないことも多い。だからこそ小さなことでいいから、自分で決めていくことが大事になるんです。

 

 

なるほど、通信制高校があるから大丈夫というのではなく、子ども達の日々の暮らしの1つ1つの判断の中にこそ、将来に繋がる芽があると見てらっしゃるんですね。

 

 

江川)そう、みんな一緒というのをやめていく。間違ってもいいから決めていく。その繰り返しで判断力がついていきます。

 

 自分にとってのいいか悪いかの経験値を積んでいく。それが自分の判断で決めていく強みです。不登校の子達は自分の時間が自由に決められるから、判断力をつける経験値をたくさんつけていると思いますよ。

(不登校は心の問題とすると、せっかく本人が自分の中に経験値を入れているのにそれが曖昧になってしまう。その問題を感じています。)

 

 

●周りから不登校を理解されないときはどうしたらいいでしょうか?

 

(同席されている方からの質問も答えていただきました。)

質問)地方で居場所の活動をしています。フリースクールもない地域なので、社会の偏見も強く、その上に居場所もないから、結局子ども達が家にこもるしかない状況があります。

 社会の方が不登校に対してもっとラフに考えて欲しいけれど、社会の見方は変わらないのかな?と希望を失いそうになるときがあります。どう考えたらいいでしょうか?

 

 

江川)先日東京で行われた「未来の先生展」というイベントでフリースクールのことを紹介したのですが、企業の方から「フリースクールイケてますね!」「すごく面白い」と言ってもらえたんです。

 

彼らは自分で決めたり、自分で判断したり、というフリースクールの学びを面白いと言ってくれるんですね。理解してくれない人たちの考えを変えるのはなかなか難しい。そのエネルギーを理解してくれる人たちと繋がる方に使った方がいいんじゃないかな。

 

 それと、不登校の子達の話を聞くと、ロジカルに話すし、問題ないという『実感値』が湧く。不登校というと、非常識で、世間知らずで、ゲーム好きのオタクというイメージがあるかもしれないけど、「自分の考え方に忠実で、論理を貫いている子達なんだな」、「いいね」って実際に会うと印象が変わりますね。

 

不登校の子ども達が大人に説明する機会も経験値になるので、こういうオンラインでもいいからあるといいなと思います。

 

 

私たちの活動(多様な学びプロジェクト)にまちの先生やステッカーで関わってくれる方からアンケートを取っても、学校外で学ぶ子達に実際に会う前と会った後では、イメージの反転は起きていますね。

 

 実際に会う機会をもつこと、理解してくれる人の方にまずはエネルギーを使うこと、この2点が社会の意識を変えるには大切ということですね。

 

 

江川)フリースクールというと学校に行けない子が、他に行くところがなく行っているイメージがあるのかもしれませんが、ここを選んでくる子もいるんです。学校に行っている子にとっても魅力的な学びの場なんだということがもっと伝えられるといいですね。

 

「学校という場に合わせることに成長を感じない、未来を感じない。だから私は学校に行かない」と言って子もいました。学校に合う子は学校で成長を実感できる子なんじゃないでしょうか。私たちのような場所だからこそ成長を感じる、未来を感じる子達もいます。そういうことをもっと伝えていきたいですね。

 

 

私たち『多様な学びプロジェクト』としても、学校外で学び育つ子達を肯定する雰囲気を社会につくる一方で、こういう居場所になっているところの良さを伝えていきたいなと思っています。今日はどうもありがとうございました!

 

●インタビューを振り返って

 

 江川さん自身が不登校の経験があったからなのか、子ども達の気持ちをとても理解されているのが印象的でした。私自身、親ではあるけれど不登校の経験がないので、子どもの気持ちに寄り添えていないのでは?と感じたり、悩むこともありました。

「(周りの大人は)自分の気持ちに素直に生きていること」が大切、「(子ども達は)日々の暮らしの中で決断することで、自分なりの経験値を培っている」と江川さんから伺って、とても心が軽くなりました。子どもと自分の間に境界線を引いて、日々を淡々と、私は私の暮らしを楽しもう。子どもの決断に先回りして心配しすぎず、互いの楽しみを持ち寄って楽しもう。そんな親子関係を目指したいと思いました。皆さんはどう読まれましたか?皆さんの感想も教えてくださいね。(生駒)

 

寺子屋方丈舎さんも貼ってくださっている「学校外で学び育つ子ども達」が立ち寄れる居場所のステッカーのマップはこちらから見ることができます。

 

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