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NPO法人多様な学びプロジェクトの『フリースクール等への伴走支援』とは?(2023年度赤い羽根福祉基金助成事業)


(写真「NPO法人 ハーモニィカレッジ」の伴走支援の様子




孤立する不登校の子どもたち

 文科省調べでは、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人(「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)となり、過去最多を更新しつづけています。さらに、学校内外で相談・指導を受けていない児童生徒が38.2%に及び、子どもたちの拠り所となる居場所や相談先が増えるスピードより、不登校の子どもたちが増えるスピードの方が 早く、子どもたちやその家族が孤立してしまっているのが現状です。


 「平日昼間の子どもの居場所」としてフリースクール等がありますが、フリースクール等の伴走支援をしているNPO法人多様な学びプロジェクトの副代表2人にインタビューをしました。


▼インタビューでの主な問い

・フリースクール等が現在果たしている社会的な役割や今の課題
・フリースクール等に伴走支援することでどのような可能性を開くことができるのか?




 伴走支援者の紹介

名前:前北 海(まえきた うみ) NPO法人多様な学びプロジェクト 副代表

●千葉県NPO推進委員会委員(2年任期)●フリースクールネモを開所。●NPO法人フリースクール全国ネットワーク理事就任。2022年より事務局長。●千葉県フリースクールネットワーク設立。同団体代表。●県内2か所目のフリースクールを開所。

●フリースクールのコンサルティング、うみけるのフリースクール屋さん開始。

メディア出演:新聞、テレビ、ラジオ、ネットニュース多数

講演活動:自治体、不登校を支える民間団体、福祉法人など多数

執筆活動:実例からみるフリースクールのつくりかた、こころの化学226号



名前:熊谷 亜希子(くまがい あきこ) NPO法人多様な学びプロジェクト 副代表 

●共育ステーション 地球の家 代表  ●ホームスクール&ホームエデュケーション家族会 設立スタッフ ●NPO法人 LINE相談員SV  ■略歴 1978年千葉県松戸市生まれ 2001年立教大学 法学部卒 2011年ホームエデュケーション開始 2013年『共育ステーション 地球の家』設立 2020年 NPO法人多様な学びプロジェクト 運営スタッフとして参加。現在、副代表理事。




フリースクールが現在果たしている社会的な役割(公益的な要素)

前北)「フリースクール等は、休むところとか遊んでいるところみたいに見られがちなのですけど、実際はそうではなくて、子どもたちに合わせた民主的な運営をしていて、子どもたちの意見を受け止め、さらにスタッフがアドボカシーの観点を持ちながら子どもの意見のバランスを調整しながらその場を運営しています。増えてきている学校で学んでいない子たちの、1つの受け皿にしっかりなる場所だと、僕は思っているのです」


熊谷)「居場所やフリースクールは、子どもたちが安心して過ごせるということを大切にしているところが多いです。心理的安全性があって、そこで自分らしく過ごしていいという安心感が得られる場所、というのが第一の役割であり存在価値であるように思います。続いて、第二・第三の役割や価値として、体験活動や学習支援があるのではないかなと思っています」



(写真「きみの森」不登校支援団体ニーズ調査の様子)



フリースクールの今の課題 ~持続するのがむずかしい社会背景~

前北「フリースクールは元々ビジネスモデルとしては成り立ってない。ほとんどが赤字経営です。形態としては学校経営とフリースクールはビジネスモデル的には変わらない。公立の学校も年間一人当たりという事は出てないんだけど、学校予算を子どもの数で割ると90~100万円ほど公費負担しているんです。

フリースクール等がそれでも成り立っているのは、人件費を削っていたり、自宅を開放していたりしているからというのが現状です」

 「金額設定を上げてしまうとフリースクール等が必要な子どもが行くことができないです。不登校は急になることが多くて、親の人生設計上に不登校になる予定がないので、学費のための積み立てもなく払えないなど、親が経済的に対応できない現状もあります」


(熊谷)「フリースクール等の居場所を探してやっと子どもが通えるところを見つけても、フリースクール等が『作っては消え、作っては消え』という現状では通い続けられない」


(前北)「豊かな学びがあるこのサイクルを回すためには、『フリースクール等で働きたい』と憧れを持っている若者が、安心して働ける社会にしないとダメなんだと思うのです。そのために、フリースクール等が自立し継続的に運営できるように支える存在が必要だろうと思います」

「私たちの伴走支援事業が赤い羽根福祉基金という、準公金と言われているような大切な原資を持ったところに選ばれた理由はそこにあるのだと思います」(※1参照) 


(※1)当団体は、2023年度に赤い羽根福祉基金助成事業に採択され、小さな居場所から大きなフリースクールまで色々な種類の伴走支援をさせていただいています。その研究結果を使って、不登校支援団体向け『伴走支援型研修プログラム』を開発しています。


【伴走支援事業目的 】

 フリースクール等の運営者やスタッフに寄り添った伴走支援型研修プログラムを作成しています。プログラム作成のための試験的な伴走支援を実践しています。実際のフリースクール等や不登校当事者の現場の声に即したプログラム作りで、不登校児童生徒と保護者の孤立や困りごとの解消を目指しています。


【伴走支援の内容】

(1)経営力・運営力強化 

(2)支援スキルアップ 

(3)小さな居場所の運営力強化



(写真「きみの森」不登校支援団体ニーズ調査の様子)




当団体の『伴走支援』とは?

伴走支援の『特徴』や、どのような『居場所づくりの支援』を心がけているのか?


(前北)「『当団体はすべての子ども達が幸せな子ども時代を』という考え方です。子どもは本来多様なもの。子ども時代を幸せにするあり方はそもそも多様ですよね」

子ども本来持っているものが活かされるためには、その子に合った多様な居場所が必要です。そのため、団体自身のビジョン、教育観、子ども観、大切にしているもの『その団体らしさ』が活きる伴走をしています。


(熊谷)「NPO法人多様な学びプロジェクトは、不登校当事者や当事者家族の経験をしたメンバーが中心となって構成された団体です。当事者ニーズが活かされた、当事者から必要とされる場づくりができるという強みがあります」

「以前、不登校当事者と話していた時に、学校に行くか行かないかで自分の評価が左右されることがたまらなく苦しかったとおっしゃっていました。学校に行くかどうかで評価されるのではなくて、その子がその子らしくあること、その子らしく過ごせることがまず保障される社会であって欲しいと思います。不登校の子どもが増え続けている今の社会では、今の自分で大丈夫と思える安心できる居場所が必要とされていますし、伴走支援でも大切にしている点です」



(写真「NPO法人 ハーモニィカレッジ」の伴走支援の様子)




推奨している組織のスタイルとは?

(熊谷)「当団体の伴走支援では、スタッフ1人1人が主体的に考えて自主的に動けるような組織づくりを推奨しています。昔は強いリーダーが引っ張っていくのが主流でした。しかし、リーダー1人で決定し運営していくスタイルでは、居場所はなかなか広がったり継続したりしていきません。1人1人のスタッフが主体的に考えて動くことで、草の根運動的に子どもが安心できる居場所を広げていけると考えています」


(前北)「運営者さんを孤独にさせないっていうのも実は大事にしているポイント。トップダウンだと運営者に決裁権があるから、責任を一人で抱え込みがちになってしまう。スタッフが自発的に意見を言えたりだとか、対立関係にならない対話が生まれたりする心理的安全性のあることが大事なのだと自分のフリースクール運営経験からも実感し、その経験を支援に活かしています」


(前北)「僕だけの力だと千葉県に2つしかフリースクール等は作れなかったけれど、僕と同じ思いを持っている人達は全国にいっぱいいるはずです。その人たちを伴走支援で支えていけば、子どもが孤立をしない、子どもがその子らしく幸せな時間を過ごすことができる社会がつくれると考えています」



(写真「学び舎あおぞら」不登校支援団体ニーズ調査)



実際に伴走支援をしてきて見えてきた問題点とその対応 

 フリースクール等の居場所が経済的に運営が難しかったり、無償ボランティアベースの運営が長く続くと無理が生まれ、スタッフ間のコミュニケーションでも問題が生じやすくなります。客観的な視点を持った第三者的な伴走支援に入ることで、発言しやすい空気感が出て本音が言いやすくなり、その結果、スタッフ間の心理的安全性が生まれる場をつくってきました。


 フリースクールなどの居場所が『こどもの安心できる居場所』であり続けられるために最も大切な心理的安全性。その必要性を実感したスタッフからこども達へ心理的安全性が広がっていきます。


【伴走支援プログラムを受けた方からの感想】

「スタッフの変化は、やはり伴走支援があったからだと思っています」

「スタッフの心が安定した」

「代表が言わなくてもスタッフ自ら動いてくれるようになった」

「相手が受け取れる話の仕方を学んだ」

「話し合うべきところを話し合える時間が取れるようになってきた」


 伴走支援事業1年目の今年度、実際に伴走してきてわかったことは、多様な子どもが居るようにフリースクール等の団体のあり方や問題点も多様だということ。さらにその団体自身がその現状を自覚し自発的に行動するためにも、何度となくフリースクール等の団体とのミーティングの機会を設けたりすることもありました。そんな、団体の実情に合った臨機応変な対応も、コンサルティングではなく『伴走』という支援だからできたこと。実情に応じた多様なアドバイスは、伴走支援者が複数の団体を運営してきた経験や運営のノウハウを基にして行いました。


  資金的に厳しくても「子どもたちの幸せのために」という想いでフリースクール等を運営している団体を支えたい。想いだけでは続けられない現状を『伴走支援』というあり方でサポートし、想いが報われる社会にしていきたいと思っています。


 子どもがその子どものまま『ありのまま』で居られる幸せな社会をつくっていく、それがNPO法人多様な学びプロジェクトの伴走支援です。


(記事:奥田)

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