【開催レポート】「鳥取県×こども家庭庁と考える不登校支援のこれから~こどもと家庭を支えるために~」を開催しました
- 4月30日
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2月19日(木)、「赤い羽根福祉基金」三か年継続助成事業成果報告会として、『鳥取県×こども家庭庁と考える不登校支援のこれから-こどもと家庭を支えるために-』シンポジウムを開催しました。
本シンポジウムでは、こども家庭庁・鳥取県と共に、こどもと家庭を支えるこれからの不登校支援と、地域における居場所のあり方について考えました。
また、3年間のフリースクール等の居場所を支える伴走支援事業の開発をもとに、居場所を支える上で見えてきた視点や工夫を共有しました。
423名の方に事前お申し込みをいただき、当日は延べ約500名の方にご参加いただきました。
オープニングでは、鳥取県の平井伸治知事、および鳥取県教育委員会の足羽英樹教育長より、地域の居場所づくりへの期待を込めた力強いメッセージをいただきました。
鳥取県知事 平井伸治氏 「公的資源だけでなく、民間の支え合いのノウハウを生かそう」

平井知事からは、小さな県だからこそ「民間や住民の皆様の支え合い」を重視してきた鳥取県の歩みについてお話しいただきました。
全国に先駆けて取り組んできた「総合教育会議」での民間有識者との対話や、フリースクールの出席扱い、通学助成といった具体的な施策を振り返りつつ、「子どもたちの多様な個性、その心に寄り添っていくことこそ大事。若竹のようにまっすぐ伸びていく、子どもとの正しいまっすぐな向き合い方を理解していただきたい」と、ユーモアを交えながら熱いエールをいただきました。
鳥取県教育委員会 教育長 足羽英樹氏 「居場所、学び、そして『人とのつながり』こそが根幹」

足羽教育長からは、不登校支援における3つの柱(自分のペースでいられる居場所、学び続けられる環境、そして人とのつながり)の提示がありました。
「誰一人取り残されない学びを実現するためには、学校、フリースクール、支援センターなど、どこかで誰かと必ず心が通じ合う環境を豊かに育てていく必要がある」と述べられ、今回のシンポジウムのテーマである「こどもと家庭を支えること」への深い共感と、今後の連携への決意を語ってくださいました。
目 次
第一部 成果報告・パネルディスカッション
第一部では、多様な学びプロジェクトの熊谷亜希子より、3年間にわたる「居場所運営者向け伴走支援事業」の成果を報告しました。
併せて、実際に伴走支援を受けた3つの団体をお招きし、支援を通じて組織にどのような変化が生まれたかを詳しくお話しいただきました。
(1)「赤い羽根福祉基金」三か年継続助成事業成果報告

不登校のこどもが35万人を超え過去最多を更新し続ける中、地域の中でこどもたちが安心して過ごせる「居場所」の拡充は、一刻を争う社会課題となっています。
しかし、多くのフリースクール等は小規模な運営主体であり、「活動をどう継続させるか」「スタッフの専門性をどう高めるか」といった深刻な課題に直面しています。
こうした「現場の切実な声」に応えるため、本プロジェクトでは3年間で全国21団体を対象に、オーダーメイドの伴走支援を実施してきました。
支援にあたっては、各団体の課題を「内的基盤の確立」「事業コアの安定」「価値向上・連携」の3つの階層に分類し、それぞれのニーズに最適化したプログラムを提供しています。

プログラム実施後の調査では、各団体が注力した課題に対して大きな改善が見られました。

そして何より、一番の成果は、「伴走支援によって組織が変化して活動が充実し、子どもたちの笑顔が増えてきた」というコメントをいただいたことです。
「居場所」の環境が整うことが、そのまま「こどもたちの安心」に直結する。そのことを改めて確信しました。
多様な学びプロジェクトでは、この3年間で培った知見をもとに、現場に寄り添う「実践型の伴走支援」と、オンライン等でノウハウを提供する「知見の共有」を組み合わせた、独自のハイブリッド型支援モデルを構築しました。
不登校支援の拡充や支援者育成を検討される自治体様にとっても、即戦力となる具体的な支援モデルとなっています。
(2) 事例紹介 伴走支援3事例の紹介
続く事例紹介では、実際に3年間の伴走支援を受けた3つの団体のご担当者様より、支援を通じた具体的な変化が語られました。
教育支援センター『すてっぷ』(運営担当:歳岡 早希 氏)

課題:専門性の向上とサポート体制の充実
教育支援センター『すてっぷ』では、発達特性のあるお子さんへの対応など、より高度な専門性が求められる現場において支援の質を高めるために、伴走支援が導入されました。
具体的な取り組みとして、専門家による現地研修や、個別指導計画に基づくケースカンファレンス(事例検討会)、組織の結束力を高める「チームビルディング・ワークショップ」などを実施。
これらを通じて、スタッフ一人ひとりの支援スキル向上と、適切なサポート体制の構築を図りました。
また、地域を越えた「横のつながり」が生まれたことも大きな成果です。
伴走支援を通じて他の居場所運営者と情報交換ができるネットワークを得たことで、運営者自身が孤立することなく、最新の知見を取り入れながら活動を継続できる環境が整いました。
一般社団法人 みんなの実家(代表理事:津村 雄一 氏)

課題:団体の強みの言語化と広報戦略
一般社団法人「みんなの実家」では、「自分たちの活動の価値をどう言語化し、必要な人に届けるか」という広報戦略の課題に対し、伴走支援を行いました。
具体的には、ワークショップを通じて団体の核となる特徴と強みを言語化し、HPの改修を実施。
さらに、地域で子どもや家庭を支えるスクールソーシャルワーカー(SSW)への説明会を開催し、「楽しい体験活動」と「必要な教科学習」を子どもたちの状況に個別に対応しながらバランスよく提供しているという強みを丁寧に伝えたことで、独自の連携モデルを構築しました。
こうした発信の結果、「本当に必要としているお子さんや保護者」へ的確に情報が届くようになり、入校者の増加という確かな手応えを得るに至りました。
牧場フリースクール まなび~馬(事業責任者:河上 友香 氏)

課題:支援スキルの向上と、揺るぎない組織の「軸」の言語化
牧場フリースクール まなび~馬では、2年間にわたる継続的な伴走支援を通じて、現場の支援力強化と組織のビジョン構築に取り組みました。
1年目:個性に合わせた支援力の向上
「特性のある個性豊かな子どもたちを、ありのまま受け止めるにはどうすればいいか」という現場の切実な悩みに対し、「とまり木オンライン」の専門講義の視聴と、伴走者との振り返りサイクルを実施しました。環境設定や視覚支援といった「水面下の支援」をスタッフが自律的に実践できる体制が整いました。
2年目:組織の「軸」となる価値の言語化
「スタッフが混乱し、揺れることのない軸を作ることが今一番大事」という助言を受け、団体のミッション・ビジョンの再定義に着手。自分たちのこだわりや強みを徹底的に掘り下げたことで、馬活動が持つ教育的意義(コミュニケーション力、頼る力、目標設定と挑む力など)を明確に言語化しました。
この成果は、団体の思いを反映させた「入所のしおり」や「チラシ」の改善にも繋がりました。
新しく完成したチラシを、子どもたちが一枚一枚丁寧に折ってくれたエピソードは、まさに当事者とスタッフの想いが重なる活動のシンボルとなりました。
(3) パネルディスカッション

第一部の締めくくりとして、行政、学校、民間団体、そして当事者の方や保護者の立場の方を交えたパネルディスカッションを行いました。
【登壇者】
三橋 正文 氏(鳥取県教育委員会 生徒支援・教育相談センター)
濱橋 太 氏(鳥取市立美保南小学校 校長)
奥定 克拓 氏(鳥取フリースクール こ・ラボ 代表)
大番 謙二 氏・幸枝 氏(保護者)
仲西 はるみ 氏(中学生)
進行:生駒 知里(多様な学びプロジェクト 代表理事)
【当事者の切実な声】
中学生の仲西はるみさん:「フリースクールは自分に合ったペースで学べる、なくてはならない場所。大人に『大丈夫だよ』と励まされても、今の私は大丈夫じゃない。大丈夫じゃない部分も含めて、丸ごと受け止めてほしい」という切実な願いを届けてくれました。

保護者の大番さん夫妻:「フリースクールとの出会いで息子の体調が劇的に改善し、人生が変わった。不登校になってから探すのではなく、最初から当たり前に選べる選択肢であってほしい」と語られました。

【学校・行政の視点:学校は「ハブ」の役割へ】
濱橋校長:「学校と子どものミスマッチを認め、これからの学校は、多様な居場所を繋ぐ『ハブ』になるべき。 そのためには、民間や保護者と対等に話せる関係性が不可欠」と提言されました。

三橋氏(県教委):「行政と民間が連携することは、『自分の通う場所が公に認められている』という子の安心感に直結する。官民の役割分担を明確にし、支援体制を強化したい」と力強い決意を述べられました。

【まとめ】
進行の生駒は、知事や教育長をはじめ、多層的な立場で「連携」を語る鳥取県の姿に大きな希望を感じたと振り返りました。
こうした「信頼関係の構築」こそが、全国に広がっていくべき支援の姿であることを再確認し、第一部を締めくくりました。
第二部 講演・クロストーク
(1)基調講演 ① 「国の不登校施策について」
こども家庭庁 長官官房審議官 水田 功 氏

令和5年に発足した「こども家庭庁」は、省庁の隙間に落ちてしまう課題を拾い上げ、常に「こどもまんなか」の視点で政策を総合調整する司令塔です。
水田氏からは、現在35万人を超えた不登校の現状に対し、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」の3つの柱について解説がありました。
不登校の児童生徒すべての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える
心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する
学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする
【こども家庭庁ならではのアプローチ:地域全体での支援】
こども家庭庁では、地域における不登校の子どもへの切れ目ない支援事業として、教育委員会の他、関係機関・民間施設等と連携し、不登校の子どもを支援しています。
不登校の子どもや保護者のサポートを行うために医療や福祉などの関係機関と連携・調整を行ったりするコーディネーターの配置、さらにはデータ連携による未然の発見・防止など、「学校・行政・民間が相まって地域全体でこどもを支える」という、縦割りを超えた連携の重要性が改めて示されました。
(2) 基調講演 ② 「鳥取県の不登校支援10年間の歩み」
鳥取県総務部長 山根 茂幸 氏

鳥取県では、平成25年から知事と教育委員会が直接対話する「教育協働会議」を設置。
そこで現場の声を汲み取り、以下の画期的な施策を次々と実現してきました。
フリースクール等の出席扱い
フリースクールへの手厚い運営支援
月額2万円まで利用料の無償化を実現
さらに、今年度はこども家庭庁の事業を活用し、多様な学びプロジェクトへの委託による「伴走支援」を導入。
各団体の運営基盤そのものを強化することで、支援の質と持続可能性を高める先進的な取り組みを継続しています。
また、教育委員会内に「生徒支援・教育相談センター」を設置し、不登校だけでなくヤングケアラーや児童虐待など、複雑化する課題に包括的に対応。
学校へのアウトリーチ支援「学校支援チーム」や、自宅から出られない子への学習環境提供など、「誰一人取り残さない」ための網の目のような支援網を構築していることが示されました。
(3) クロストーク
「今後の不登校支援のあるべき姿とは〜教育と福祉の狭間を乗り越えて」

シンポジウムのクライマックスとして、国、県、そして当事者が一堂に会し、これからの支援のあり方について語り合いました。
【登壇者】
水田 功 氏(こども家庭庁長官官房審議官)
八木 浩子 氏(鳥取県教育委員会 生徒支援・教育相談センター 所長)
仲西 はるみ 氏(中学生)
進行:生駒 知里(多様な学びプロジェクト 代表理事)
■ 縦割りの「隙間」を埋める、地域ぐるみの支援
水田氏(こども家庭庁)からは、不登校の背景が複雑化する中、教育委員会だけでなく福祉・医療・民間といった地域全体の専門性を結集させる必要性が語られました。
特に、進学などの節目で支援が途切れないよう、自治体が中心となった「切れ目のない支援」の重要性が示されました。
■ 当事者の問い:学びの「のりしろ」をどう作るか

中学生の仲西はるみさんからは、二つの切実な問いが投げかけられました。
「学びの場所が変わるだけで家庭の経済的負担が増えるのはなぜか」
「フリースクールでも理科の実験や温かい給食を体験したい」
これに対し、お二人から次のような力強いメッセージをいただきました。
水田氏(こども家庭庁):国の「居場所づくり指針」の視点から

居場所とは物理的な場所だけでなく、時間や人との関係性すべてを指す。
大人が用意した『お仕着せ』ではなく、こども自身が居場所だと感じる場所を、社会全体で心を一つにして作っていく必要がある。
経済的負担についても、モデル事業などを通じて支援のあり方を深めていきたい。
八木氏(鳥取県教委):大人が少し手を伸ばす「のりしろ」の提案

大人が最初から無理と決めつけず、まずは一旦受け止める。
学校の施設を借りたり給食センターと連携したりといった、大人が少し手を伸ばす『のりしろ』こそが、こどもが安心して次の一歩を踏み出すエネルギーになる。
最後に進行の生駒は、当事者の声に誠実に答え、共に未来を考えようとするお二人の姿こそが、まさに教育と福祉の狭間を乗り越える「のりしろ」のあり方だと振り返り、シンポジウムを締めくくりました。
今回のシンポジウムを通じて、官民が手を取り合い、こども一人ひとりに合わせた「のりしろ」を広げていくことの重要性が改めて示されました。
多様な学びプロジェクトでは、今後も「伴走支援」や「とまり木オンライン for サポーターズ」「街のとまり木」を通じて、全国の居場所運営者の皆様、そして自治体の皆様と共に、こどもたちの笑顔を支える活動を続けてまいります。
※写真提供:タジキナミ
























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