不登校の子どもの新しい学習評価について、共同要望書を提出し、記者会見を行いました
- 5 時間前
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共同要望書提出のご報告と、追加賛同のお願い
現在、文部科学省・中央教育審議会では、校内外の教育支援センター等を利用する不登校の子どもについて、一人ひとりの状態や学習状況に応じた特別の教育課程をつくり、その学習成果を評価する新しい仕組みが検討されています。
2026年8月31日、「不登校児童生徒の新しい学習評価制度に関する共同要望書」提出実行委員会は、文部科学大臣、中央教育審議会会長、初等中等教育分科会長等に対し、「不登校児童生徒に係る特別の教育課程及び学習評価について 子どもの心身の安全を最優先とした制度設計を求める共同要望書」を提出しました。

同日、記者会見を行いました。不登校を経験した大学生・高校生、支援者、医療関係者等から、それぞれの立場で今回の制度について感じていることをお話しさせていただきました。

今回の要望には、不登校支援、教育、医療、子どもの権利などに関わる多くの方々から賛同をいただきました。
※賛同者・賛同団体は記事後半に掲載しています。
私たちは、不登校の子どもへの支援を充実させることや、子どもが自ら学びたいと思ったときに、その子に合った方法で学び、その学びが大切にされることには賛同しています。
一方、その学びを評定に換算し、調査書や高校入試上の利益に直接結びつけることについては、
子どもの心身への影響や、現場教職員への負担を含め、十分な検証と慎重な検討が必要だと考えています。
学びを支えることと、高校入試で評価することは同じでしょうか
文部科学省の案では、その子が実際に取り組んでいる学習内容に応じて評価し、それを成績評価にすることが考えられています。
これまでの学年の基準だけでは十分に表せなかった学びを丁寧に捉え、本人に返していくことには、大切な意味があると考えます。
一方で、
「本人の学びを認めること」
「その学びを記録すること」
「その学びを評定につけること」
「高校入試でその評価を使うこと」
は、それぞれ目的が異なります。
特に、高校入試で有利になる仕組みが加わった場合、制度への参加が形式上は任意であっても、
「参加した方が進学に有利なのではないか」
「途中でやめると将来不利になるのではないか」
と感じる子どもや保護者が出てくる可能性があります。
子どもの将来を心配する保護者が、「進学につながるなら、もう少し頑張ってほしい」と思うことも自然なことです。
しかし、子ども本人は、まだ休養が必要だったり、評価を受けることを望んでいなかったりする場合があります。
本来は子どもの学びを支えるための制度が、新たなプレッシャーや親子間の葛藤を生むことがないか。
慎重に考える必要があります。
「学べている」だけでは分からないことがあります
不登校の子どもの状態は一人ひとり異なります。
教育支援センターに通えている。
学習に取り組めている。
人と話せている。
一見すると元気に見える。
そういう子どもの中には、学校生活等によって心身ともに深く傷つき、十分な休養を必要としている子どもや、周囲の期待に応えようとして無理を重ね、強い疲労や自傷・希死念慮を抱えている子どももいます。
外から「学習できている」「通えている」ように見えることだけで、心身が学びに向かえる状態にあると判断することはできません。
頑張りを認めることが励みになる子どもがいる一方、「もっと頑張らなければ」と無理を続けてしまう子どももいます。
だからこそ、学ぶことだけでなく、休むことも、途中でやめることも、何もしないことも、評価を受けないことも、安心して選べる必要があります。
本人が本当に選べるためには「居場所」が必要です
文部科学省の案では、本人や保護者の意向を確認することや、休養を優先すべき子どもへの配慮も示されています。
私たちは、こうした方向性は重要だと考えています。
一方、「本人の意向を確認する」だけでは十分ではありません。
学習や評価に参加しないことを選んだときにも、その子が安心して過ごせる場所が必要です。
教育支援センター等が「勉強する場所」だけになったり、学習や評価を求められるように感じる場所になってしまえば、
「学習するか、そこにいられなくなるか」
という選択になりかねません。
学習しない日も、休む日も、何もしない時間も安心して過ごせる「居場所」であり続けること。
その上で、本人が制度への参加、不参加、中断、評価を受ける・受けないことを実質的に選べること。
これは今回の制度を考える上で、とても重要だと考えています。
また、本人との丁寧な対話や継続的な意思確認、個別の計画づくり、関係者間の情報共有や評価を行うには、十分な人員と時間が必要です。
新しい制度だけをつくり、現在の教職員や教育支援センター職員の仕事に上乗せする形になれば、
子ども一人ひとりに丁寧に向き合う時間が失われかねません。
子どもが本当に選べる制度にするためには、安心していられる「居場所」と、
それを無理なく支えられる「現場の体制」、両方が必要だと考えています。
高校進学の機会を保障する方法は、一つではありません
不登校を経験したことで高校進学の可能性が狭くなることは望ましくありません。一方、進路保障の方法は、「新しい評定を付け、それを入試で有利に扱うこと」だけではありません。
調査書の比重を下げる、学力検査や面接を重視するなど、多様な選抜方法も考えられます。取りまとめ案自体も、こうした複数の方法を示しています。
だからこそ、本特例による評価を「一定の加点」など有利な取扱いにつなげることは、新たな学習圧力を生まないか十分に検証してほしいと考えています。
私たちが特に求めている4つのこと
共同要望書全体では4つの柱から制度設計について要望しています。
その中でも、現在の制度案について特に早急な対応を求める事項として、次の4点を掲げました。
本人の意思と選択を制度上保障すること
本人への分かりやすい説明と明示的な同意、継続的な意思確認、本人がいつでも参加を中断・終了できること、参加しないこと・途中でやめること・終わらせることによる不利益な取扱いを受けないことを、制度上の実施条件として明記してください。
高校入試の「加点」等は、十分な検証まで削除すること
本特例による評価を、高校入試上の加点その他の有利な取扱いに結び付ける記述は、必要性・安全性・公平性や、本人が本当に自由に選べるかが十分に検証されるまで、取りまとめ案から削除してください。
全国実施前に、限定的な第三者検証を行うこと
全国的な実施に先立ち、対象自治体・実施校・教育支援センターと対象人数を限定した検証段階を設けて、独立性を有する第三者を含む体制で、子どもの心身への影響と現場負担等を検証し、その結果を公表してください。
「運用の手引き」づくりに当事者・現場・専門家が継続参画すること
不登校経験のある子ども・若者、保護者、民間支援団体、教員・教育支援センター職員、医療・心理・福祉・自殺予防の専門家を正式に参画させ、単発の意見聴取にとどまらない継続的・実質的な参画の仕組みを設けてください。
ここでは、今回特に早急な対応を求めた4点をご紹介しました。
共同要望書では、この背景にある現状認識や、安心できる教育環境・支援体制を含むより詳しい要望を「4つの柱」に沿ってまとめています。
また別紙では、8月4日「取りまとめ(案)」について、①高校入試での「一定の加点」等の有利な取扱い、②「1」や「-」と自己肯定感・学習意欲との関係の記述、③本人の不参加・中断・終了と教育支援センター等の「居場所」機能、④「頑張り」「諦めずにやり遂げる」等の表現、⑤「運用の手引き」への当事者参画について、5点の具体的な修正文案を示しています。
ぜひ要望書全文もお読みください。
共同要望書への追加賛同を受け付けています
共同要望書は8月31日に文部科学省等へ提出しましたが、この要望の趣旨に賛同してくださる個人・団体から、追加の賛同を受け付けています。
私たちはこれからも、「運用の手引き」がどのように作られるのか、本人の意思や不利益禁止がどのように位置付けられるのか、高校入試との関係がどう整理されるのか、実施前にどのような検証が行われるのかを見ていきます。
要望書を提出した8月31日には、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(素案)」も公表されました。そこには、多様な子どもを包摂することや、一人ひとりが学びを自己調整できるようにすることなど、私たちの問題意識と重なる方向性も示されています。だからこそ、その理念が不登校の子どもに関する具体的な制度でも守られるよう、新しい制度が、本当に子どもを支える仕組みになるよう、引き続き具体的な制度設計を見ていきたいと考えています。
趣旨にご賛同いただける方は、まず共同要望書全文をお読みいただき、追加賛同をご検討いただけましたら幸いです。
賛同方法:ご賛同いただける場合は、下記リンクよりお申し込みください。
追加賛同締切:2026年9月15日
これまでの主な賛同団体・賛同者(敬称略)
明橋大二(精神科医・真生会富山病院 心療内科部長)/石井しこう(不登校ジャーナリスト)/NPO法人多様な学びプロジェクト/小澤いぶき(一般社団法人Everybeing共同代表)/喜多明人(早稲田大学名誉教授)/齋藤眞人(立花高等学校校長)/澤田稔(上智大学教員)/西郷孝彦(真鶴町教育委員)/棚園正一(漫画家・不登校経験者)/甲斐田万智子(認定NPO法人国際子ども権利センター代表理事)/武田信子(臨床心理士)/武田緑(NPO法人School Voice Project理事)/永田佳之(聖心女子大学現代教養学部教授)/中村尊(長崎県フリースクール等ネットワーク代表)/新美妙美(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教/小児科専門医、子どものこころ専門医)/西野博之(認定NPO法人フリースペースたまりば理事長)/日野公三(NPO法人 日本ホームスクール支援協会 理事長)/びーんずねっと/本田秀夫(信州大学医学部医学科子どものこころの発達医学教室教授)/松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部 部長)/村上陽一(信州フリースクール居場所等運営者連絡協議会代表)/古山明男(おるたネット代表)/山下英三郎(日本社会事業大学名誉教授)/吉田敦彦(大阪公立大学名誉教授)ほか
賛同団体・賛同者の全一覧を見る(クリックすると開きます)
賛同団体・賛同者(各区分五十音順・敬称略)
※更新日:2026年9月2日
賛同団体
学校外で学び育つ子どもの権利保障を進める会・ひょうご/NPO法人多様な学びプロジェクト/長崎県フリースクール等ネットワーク/びーんずねっと/明蓬館高等学校
賛同者
明橋大二(精神科医/真生会富山病院 心療内科部長)/石井しこう(不登校ジャーナリスト)/市川寛(寺子屋TANQ代表)/岩田弘志(NPO法人熊本オルタナティブ教育協会)/岩渕和信(湘南学園小学校校長)/上村一隆(ふくおかフリースクールフレンドシップ協議会 事務局長)/尾形岳彦(認定NPO法人盛岡ユースセンター理事長/センター長)/奥定克拓(鳥取フリースクールこ・ラボ代表、鳥取フリースクール協議会代表)/小澤いぶき(一般社団法人Everybeing共同代表)/甲斐田万智子(認定NPO法人国際子ども権利センター代表理事)/風巻浩(聖心女子大学グローバル共生研究所研究員)/加藤隆史(人と学ぶ場ふらっと代表)/金澤拓紀(青森県スクールソーシャルワーカー)/喜多明人(早稲田大学名誉教授)/小谷綾子(NPO法人School Voice Project理事/子どもソーシャルワーカー)/西郷孝彦(真鶴町教育委員)/齋藤眞人(立花高等学校校長)/斉藤光代(一般社団法人信州親子塾共同代表)/佐藤信一(フリースクールくるーず(NPO法人たねの会)・共同代表/スタッフ、不登校当事者保護者)/澤田稔(上智大学教員)/鈴木正樹(アットスクール代表)/髙柳健(一般社団法人信州親子塾共同代表)/武田信子(臨床心理士)/武田緑(学校DE&Iコンサルタント・NPO法人School Voice Project理事)/棚園正一(漫画家・不登校経験者)/時田良枝(一般社団法人Polyphony 代表理事)/中村尊(長崎県フリースクール等ネットワーク代表/NPO法人フリースクールクレイン・ハーバー代表)/永田佳之(聖心女子大学現代教養学部教授)/永易江麻(東京コミュニティスクール 副理事長、東京都フリースクール等ネットワーク 事務局長)/新美妙美(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教、小児科専門医、子どものこころ専門医)/西崎萌(一般社団法人Everybeing共同代表)/西野博之(認定NPO法人フリースペースたまりば理事長)/西山哲平(沖縄フリースクール居場所等運営者連絡協議会代表)/林 恭子(一般社団法人ひきこもりUX会議代表理事/不登校経験者)/日野公三(NPO法人 日本ホームスクール支援協会 理事長)/古山明男(おるたネット代表、千葉市教育機会確保の会代表)/本田秀夫(信州大学医学部医学科子どものこころの発達医学教室教授)/松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部 部長)/村上陽一(信州フリースクール居場所等運営者連絡協議会代表)/山下英三郎(日本社会事業大学名誉教授)/横地香代子(タウンスクーリング愛知代表)/吉田敦彦(大阪公立大学名誉教授)/和田周晋(不登校経験者/一般社団法人大きな玄関 事業統括責任者)
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