「ひとりで悩まなくていい」――長野県主催「保護者のつどい」を開催しました

子どもが学校に行かなくなったとき、保護者もまた、どうしたらいいのか分からないまま、悩みをひとりで抱え込みがちです。
「このままでいいのかな」
「私の関わり方が悪かったのかな」
「ほかの家庭はどうしているんだろう」
子どものことを大切に思うほど、頭の中は子どものことでいっぱいになります。
でも、不登校の悩みは、身近な人ほど話しにくいこともあります。
だから今回、いちばん大切にしたかったのは、
「ひとりで悩まなくていい」と感じられること。
2026年8月21日、長野県主催、多様な学びプロジェクト運営による「学校に行かない・行けない子の理解を深める『保護者』のつどい」をオンラインで開催しました。
お申し込みは246名。 当日はオンラインで150名ほどの方がご参加くださいました。
目次
保護者をつなぎ続けてきた、山本りかさんのお話
画面越しでも「つながる」
「待つっていつまで?」――質問コーナーから
長野県だから届けられた、地域の「次の一歩」
最後は、同じ立場の保護者と交流
アンケートから見えたことーー高い満足度
ひとりで悩まなくていい
保護者をつなぎ続けてきた、山本りかさんのお話
第1部にお迎えしたのは、「明るい不登校」代表・不登校理解推進コーディネーターの山本りかさん。
山本さん自身、3人のお子さんの不登校を経験した保護者です。

2021年から毎朝、音声SNSで不登校の会「明るい不登校」を続け、開催は約1900回以上、のべ20万人が参加。50以上のLINEグループにも、のべ6500人以上が参加し、不登校の保護者がつながれる場をつくり続けています。
そんな山本さんだからこそ、今回のお話は「こうするのが正解」と教えるものではありませんでした。
ご自身が焦ったこと、先回りしてしまったこと、「地雷を踏んだ」と振り返る経験まで、明るく、率直に語ってくださいました。
そして、とにかくたとえがわかりやすい。
中でも印象的だったのが、「靴」のお話です。
合わない靴を履き続けて足が痛くなったとき、
足を靴に合わせるのか。
それとも、靴を足に合わせるのか。
学校に行けないことも、「子どもを学校に合わせる」だけではなく、その子に合う環境を考えてみる。
シンプルなたとえだからこそ、すっと腑に落ちるものがあり、いつの間にかうんうんとうなずきながら聞いていました。
画面越しでも「つながる」
講師の山本りかさんが、
「気になったことや、“うちも一緒”“わかります”ということを、チャットに気軽に書いてください」
と呼びかけると、チャット欄はどんどん動き始めました。

山本さんからは「もうワンチームなつもりで」という言葉も。講師の話を静かに聞くだけではなく、参加者も一緒にその場に加わる雰囲気が、最初からつくられていきました。
実際、イベント中は反応が次々と寄せられ、目で追うのが大変なほど。
画面越しではあっても、
悩んでいるのは自分だけではないんだ、
同じことで迷っている人がこんなにいるんだ、
と感じられる時間になったのではないでしょうか。
「待つっていつまで?」――質問コーナーから
約40分のトークの後は、多様な学びプロジェクト代表理事・生駒知里との対談形式で、事前に寄せられた質問と、当日のチャットから届いた質問に答えていきました。
ここからは、さらに「わが家の場合はどうだろう?」と考えたくなる時間に。
中でも印象に残ったやりとりを、少しご紹介します。
Q.「待つ」って、いつまで? どうやって待てばいい?
不登校の保護者にとって、とても難しい「待つ」ということ。
山本さんは、「いつまで、というのは家庭によって違う」と話します。親子の信頼関係も、すぐに元通りになるのではなく、一枚一枚積み重ねていくものだと語られました。
一方、生駒からは、「学校に行く」「勉強を始める」といった大きな変化だけをゴールにしていると、目の前で起きている小さな変化を見落としてしまうことがある、という話も。
声を出して笑った。
コンビニに行った。
歯を磨いた。
髪を切った。
山本さんは、そんな変化に気づけると「今日、記念日やわ」と思える、と笑顔で話していました。
大きな「前進」を待つのではなく、今ここにある小さな変化に気づく。
このやりとりに、子どもの見方を少し変えてもらった保護者の方もいたのではないかと思います。
Q.学校の遅れや進路を考えると、不安に押しつぶされそうです
中学生のお子さんを持つ保護者からも多かった、進路への不安。
山本さんは、「全日制高校に行くことしか知らなければ、出席日数や受験勉強のことばかりが気になる。でも、通信制、高卒認定、留学など、いろいろな選択肢を知っているだけで不安は違ってくる」と話しました。
大切なのは、情報をすぐ子どもに差し出して動かそうとすることではなく、まず保護者自身が選択肢を知り、「道は一つではない」と思えること。
不登校経験者のその後の進学や就労の話を知ることも、保護者の安心につながるという話がありました。
「この先が見えない」からこそ、不安になる。
だからこそ、正解を一つ示すのではなく、選択肢を知ることそのものが支えになるのだと感じたやりとりでした。
Q.「母の精神的な負担が半端ないです。どうしたらいいですか?」
当日のチャットから寄せられた、とても切実な質問です。
「ひとりになりたい。でも家にはずっと子どもがいる」
そんな気持ちに、山本さんも「すごくわかります」と、自身の3人のお子さんが家にいた頃の経験を話しました。
そして話は、「不安をなくす」ではなく、その不安をどこに出せるかということへ。
山本さんは、
「母のこのモヤモヤをどこに持っていくか」
という話をしました。
不安になること自体を我慢する必要はない。
同じ経験をしている保護者や、安心して話を聞いてくれる人に吐き出せる場所を持つ。
それが、子どもに不安をぶつけずにいるためにも大切なのではないか――そんな話へとつながっていきました。
今回のテーマである、保護者同士のつながり=ピアサポートが、とても具体的に見えた場面でもありました。
「もう少し聞いていたかった」と感じるトークライブと質問コーナーでした。
長野県だから届けられた、地域の「次の一歩」
山本さんは最後に、「ひとりで背負いすぎないで」「周りの人とつながったり、情報を得たり、協力してくれる人を見つけてほしい」と参加者に語りかけました。
そして、その言葉からつながるように始まったのが、長野県内の具体的な支援情報の紹介です。
長野県県民文化部こども若者局次世代サポート課、長野県教育委員会事務局心の支援課から、県内のフリースクールや多様な学びの情報を集めた「kikka☆link(きっか・リン)」、県内のフリースクールや居場所が集まるイベントなどが紹介されました。

さらに、心の支援課の臼田課長からは、メタバースを活用した新しい不登校支援についても紹介がありました。学校や教育支援センターにつながりにくい子どもが、オンラインゲームやイベント、チャット交流、個別面談などを通じて、人とつながる新たな居場所をつくる取り組みです。

不登校について学んで終わるのではなく、
「長野県にはどんな選択肢があるのか」
「今は外に出ることが難しくても、どんなつながり方があるのか」
まで具体的に知ることができる。
当事者の経験から安心を得ることと、行政が持つ地域の支援情報につながること。
その両方を一つのイベントの中で届けられたことは、長野県主催だからこその大きな意味があったと感じています。

イベント冒頭でも、長野県県民文化部こども若者局次世代サポート佐々木課長よりご挨拶をいただきました。
最後は、同じ立場の保護者と交流
そして第2部は、希望者が4~5人ほどの小グループに分かれての保護者交流会。
お子さんの年齢なども考慮してグループをつくり、参加者が安心して話せるグランドルールを共有。各グループには、事前研修を受けたファシリテーターが入りました。
発言を無理に求めず、聞くだけの参加もOK。
講師の話を聞く。
質問を通して考える。
地域の支援を知る。
そして最後に、自分のことを同じ立場の人と話す。
今回のプログラムは、そこまでを一つの流れとして設計しました。
自治体からの情報提供だけでも、講師の講演だけでもなく、「知る」と「安心する」と「つながる」を組み合わせたことが、このイベントの特徴だったと思います。


アンケートから見えたことーー高い満足度
では実際に、参加した皆さんはこの時間をどう受け止めたのでしょうか。
イベント後のアンケートでは、全体満足度4・5が87.8%、他の方にもすすめたいという回答の4・5が89.2%となりました。
また、第1部のトークライブ、県内情報提供、第2部の保護者交流会のいずれも、満足度4・5が8割を超えました。

参加後の変化についての回答で最も多かったのは、
「既にやっていることが、これでいいと思えた」52.1%(37名)
でした。
このほか、
「子どもの気持ちに寄り添いたいと思えるようになった」50.7%(36名)
「不登校、多様な学びへの理解が深まった」49.3%(35名)
「孤立感が減った」42.3%(30名)
という結果になりました。
保護者自身の関わり方への肯定感、子どもへの理解、孤立感の軽減など、今回のイベントで大切にしていた点に関する回答が寄せられました。

トークライブ・質疑応答への評価
「良かった点」の自由記述48件のうち、山本りかさんの当事者としての経験談、たとえ話の分かりやすさ、山本さんと生駒の掛け合いに関する肯定的な記述が26件(54.2%)ありました。
また、当団体のオンライン講座でも大切にしている、チャットや質疑応答を取り入れた参加型の進行についても、肯定的な記述が7件確認されました。
参加しながら楽しく聞けたことや、他の参加者の思いも参考になったことなどが、良かった点として挙げられています。
長野県内の支援情報提供への評価
長野県内のフリースクール・居場所や、メタバースを活用した新しい不登校支援等の情報提供については、80.9%の方が満足度4・5と回答しました。
保護者交流会への評価
第2部の保護者交流会については、90.0%(18名/20名)の方が満足度4・5と回答しました。
「良かった点」の自由記述48件のうち、交流・つながり・共感に関する記述は16件、ファシリテーターの関わりやグループ分けを具体的に評価する記述は5件ありました。
参加者の声(一部)
「ファシリテーターさんが、共感して聞いてくれたので、終わったときのスッキリ感が初めての感覚でした。ありがとうございました。」
「少人数で、ファシリテーターさんが優しく温かく進行して下さったので話しやすかったです。」
「同じ学年の保護者の方々との情報交換ができた」
また、今後の講座や支援への希望として、交流会の定期的な開催や、交流会で知り合った方との継続的なつながりを求める声も寄せられました。
ひとりで悩まなくていい
今回のイベントを企画するとき、参加した皆さんに持ち帰ってほしいと思っていたのは、
「自分だけじゃなかった」と感じられる安心感。
孤独感がやわらぎ、心が少し軽くなる時間。
アンケートからも、その思いが参加者の皆さんに届いたことがうかがえました。
「子どもを支えるために、まず、保護者を支える。」
山本さんが伝えてくださった言葉です。
子どもが元気になるには、まず一番近くにいる大人が「大丈夫」と笑えること。同じ経験をした人の話を聞いたり、気持ちを分かち合ったりすることが、安心につながります。
そして、その安心の先に、地域で利用できる支援や、子どもに合った学び・居場所の選択肢がある。
今回、長野県と多様な学びプロジェクトがそれぞれの強みを持ち寄ることで、保護者の気持ちに寄り添うことから、地域の支援につながるところまでを一つのプログラムとして届けることができました。
これからも、保護者がひとりで悩まなくていい場所を。
「ここなら話してもいいかも」
「ちょっと聞いてみようかな」
そう思える場を、地域の中に増やしていけたらと思います。
ご参加くださった皆さまをはじめ、素敵なお話を届けてくださった山本りかさん、交流会を支えてくださったファシリテーターの皆さま、そして、企画段階からともに考え、開催にご尽力くださった長野県の皆さま、本当にありがとうございました。
イベント動画:https://youtu.be/xudell4uIwQ
【当団体の事業】
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当法人では、自治体の不登校施策に関するご相談・ご支援を承っております。不登校施策のコンサルティング、エビデンスに基づく施策の立案支援や調査、保護者向けイベントやワークショップの企画・運営、保護者オンライン支援サービスのご提供、居場所の一覧サイト作成、また不登校の子どもとそのご家庭を支える関係職への研修プログラムの実施も可能です。地域の実情やご要望に応じて、柔軟にご提案いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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▼街のとまり木サイト:https://tomarigi.online/
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