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オンライン講座【休校明けの子ども達に いま大人ができること】開催報告


 5月31日、「休校明けの子ども達に、今まわりの大人ができること」というテーマでオンライン講座を開催しました。60名以上のお申し込み、当日も50名以上のみなさまにご参加いただきました。

 今回のゲストはこのお二人。

 病院内学級で学校に継続的に通うことが困難な子ども達へ関わってこられ、ドラマ『赤鼻のセンセイ』のモデルになり、NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』にも出演された「あかはなそえじ先生」こと副島賢和さん

 子ども達との遊びの現場に立ち続け、すべての子どもが豊かに遊べる東京をつくる一般社団法人TOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事をつとめるプレイワーカーの「めだか」こと嶋村仁志さん

2人に共通するのは、子どもが発する「今」を敏感にキャッチして、受けとめ、子ども達が安心できる形で返せる「プロフェッショナル」な力です。

 共通して見えている課題と、今のような危機的状況で、保護者や教育者が、どんな風に子ども達と関わったらいいのかのヒントを多様な学びプロジェクト・代表の生駒知里がモデレーターとなってうかがいました。

■嶋村さんのお話 「子どもたちが遊ぶことの意味と、遊びがもつ重要性について」

まず、冒険あそび場とは?

「子供が自分で遊びを作り出せる場所。それぞれの子どもがやってみたいことをできる。何もしなくてもいい。一人でいるときにしか起こらない成長があると思います」。

特に気になったのは「遊びのレンズ」のお話です。

同じ子どもでも、見方(レンズ)によって見方、関わり方が変わる!

医学のレンズ、教育のレンズ、生活のレンズで見ると、つい怒ったり、止めたくなる行動も、「遊びのレンズ」を通してみると、一緒に楽しめてしまう、なんだか共感できるというお話です

 頭にセミの抜け殻が付いた写真や、アイスクリームの看板をなめちゃう子どもの写真を見て、参加者から、「すごい!」「うちの子もやってました」という声があがりました。

危機的状況でも遊びについて、IPAのガイドラインの紹介もありました。

喪失、病気、死といったつらいテーマを含む遊びについて(たとえば「コロナごっこ」など)は、子供にとって大事なこと。とめないほうがいいとされているそうです。子供たちの気持ちの発露として受け止めたいなと思いました。

■副島さんのお話「子どもは本来、今を生きる存在」

 副島さんは、小学校の教員を25年務めた最後の8年間を、昭和大学の院内学級の先生をされていました。

その経験をふまえて、いま、子どもにどう寄り添ったらいいかという視点でお話してくださいました。

その語り口はとてもおだやかで、それだけでほっとするような気持になりました。 まず「あかはなそえじ先生」という名前の由来について。

子どもたちとどう接していったらいいか悩んでいる時にみた『パッチ・アダムス』という映画がきっかけだそうです。

院内学級の子ども達に、親をはじめまわりの大人たちは「勉強なんて治ってからすればいい」と声をかけることが多いです。

でも、子ども達は、本当は勉強したいと思っている。ホントの学びに出会えた子たちはわくわくドキドキしているのですというお話にまずハッとしました。

 また福島さんのお話は今の子ども達の状況にも触れられました。

いま、傷付きの中にいる子たちが多いと思いかもしれません。喪失による傷付きです。

子ども達の喪失感は大人たちとは少しちがいます。

子供たちは自分が世の中の中心だと思って生きている生き物です。裏を返すと世の中のすべての事象に自分が関わっていると感じている。

おもちゃが壊れる、お友達が転校する、病気が流行る……もしかして私のせいかもしれない。今回の出来事もそう捉えている子どもが少なくないかもしれません。

子どもは本来、今を生きる存在>という手書きのフリップとともに、

副島さんの話は続きます。

水たまりがあったらばしゃんと入る。ありがいたら道端にしゃがみこむ。 でも、どういう子どもたちが評価されるでしょう? 

汚れたらいけないなとか、遅刻しないようになど、先のことを考えて、やらない子が評価される。エネルギーのある子はがんばったりがまんしたりすることもある。でも今を生きることができないときにはもっとエネルギーが下がってしまう。

では、どうすればいいのでしょう。

その子の今を大事にする。感情や感覚を一緒に味わう

 夕日がきれいだな。これ、くさいね。テレビを見て顔をしかめていたら「おとうさんもこれ、苦手なんだよな」とつぶやいてみる。  あなたの感じている感情は持っていていいものだよと受け止めることを大事にされているそうです。

 もし子どもが「おなか痛い」といっていたら。 「あたためる?」「どこかにぶつけたの? なにかしたの?」とたずねたり、「痛くない、痛くない」と否認したりする前に、「痛いんだね。そこが痛いの?」と受け止めてほしい。

自分の感情、感覚は持ってていいものだと思えると、子どもはエネルギーを回復していくことができるという話は、子どもの「痛い」などの訴えにいつもどんなふうに返事をしてたかなと振り返るきっかけになりました。

■代表・生駒知里より

 一つの経験談として……。  現在13歳の長男が小学校1年生のとき、「半年間学校に行ってみてどんな場所かわかった。自分にはあわない場所だとおもう」「自分の勉強したいことを、自分の勉強したい時間に、自分が勉強したいだけやりたい」と言って、学校に行かなくなったところから始まった混乱と、そこから「自分は何も失っていない」「子どもが笑っていることを一緒に楽しんだらいいんじゃないかな」という気づきにいたったこと、そこから起こった子どもたちの変化の話を伝えました。

ホームスクールで思いっきり遊ぶようになり、数年を経て教科学習への興味も芽生えつつあるそうです。

■チャットのコメントから話が展開していきました

 ここからは、チャットのコメントを拾いながら、生駒がモデレーターとなって、お2人の対談となりました。

Q:コロナ時代に、思いきり遊ぶことと感染対策をどう両立させるのかがむずかしいです。 A: (嶋村さん)限界があるという思いはあります。けれど、この時期だからこそ、今までやっていなかった遊びに挑戦できると捉えてもいいと思います。 普段ややらない、ふとんでのハチャメチャ遊び、今までつくったことのない料理に挑戦してみるなど、面白そうと思ったことはとにかく「やってみる」。同じことはできないけど、できることを楽しむ。道端の雑草を拾ってきて植えたり、ただただ青空を30秒ジーッと眺めたり。何かさせるより、子どもが感じている今を一緒に感じてみたいと思っています。 (副島さん)院内学級の経験から。エネルギーが減っている子たちって、何やりたい?と聞いても答えられない。「どっちでもいい」という。

何が「好き」なのか、何にわくわくするのか。一人一人のエネルギーの状態をきちんと把握して、どんな声掛け、どんなかかわりをしたらいいかを考えてみる。それが今、大人に問われていることだと思います。

Q:息子の気持ちをくんで自由にすごさせると、ゲームやYOUTUBEばかりになります。これでいいのか不安になります。外遊びもしてほしいと思うのですが、子どもに寄り添ってあげようとすると葛藤します。

A: (嶋村さん) ゲームが無くなってしまうとその子のよりどころがなくなってしまうこともありますよね。葛藤するところです。なかなか制約を作るというのはむずかしいかもしれませんが、我が家では「一日に画面を見るのはこれだけ」と決めちゃったりもしています。それはオンライン授業も含めてです。一つの方法として、ですが。あと、その子がゲームをしながら何を感じているのかは聞きたいな。僕ならどこをおもしろいと思っているのかなと尋ねてみると思います。

(副島さん)本当にゲームやYou Tubeをやりたくてやっているのかなということを考えてしまいます。なぜ時間をつぶしたい、ヒマがあることが嫌なのか。時間があると考えちゃうから、ゲームやマンガの世界に入っていこうとするのか。

僕は、自分の中からわいてくる不安から逃げようと思っている子には、対処法を渡しにいっていました。本当にわくわくどきどきしながらやっていたら、話しかけません。また、同じ画面を見ていても、勉強はいいけど、ゲームはだめという線引きについては問い直す機会じゃないかなと思います。

Q:不安から勉強に向かっているのか、楽しんで勉強しているのか、どう見分けるのでしょうか。 A: (副島さん)子ども達の表情を見るようにしています。不安で学んでいる子は楽しそうじゃない。関係ができていたら「なんかやってないと不安?」と尋ねることもあります。受容はするけど許容はしない。ネガティブでもポジティブでも感情はどんなものでも受け止めるようにしている。「不安なんだ」って言われたら「そうか」と受け止めた後で、ダメなことはダメと伝えたり、やらなきゃいけないことを渡します。

Q:副島先生は、教員時代、学校にこない子のことをどのように感じられていましたか。 A: (副島さん)昔の私は学校に来て欲しいと思っていました。ポツンとあいている机を見て、傷ついているところがありました。「ごめんなさい」とも思いますし、苦しくなったりもします。先生によっては、それが怒りとして出る場合もあると思います。「せっかく家にいるのだから、その時にできることをする時間なのでは」と思えるようになってからは楽になりました。いずれにしても、その子との関係は、僕は切らないと思って、会えなくても会いに行っていました。仲良くなれて、じゃあ、学校にまた来てみようかなと思うように子どもがなったときに、迎え入れることができるように、ちゃんとクラスを成長させておこうと思っていました。学校に行かないことで育める力があるならば、それをどう保証するか。嶋村さんのような立場の人、保護者などまわりの人にお願いする、コーディネートをしていくというのは教育に携わる人間の仕事だと思っています。

Q:子どもに寄り添う、受容するために、お二人はどのように自分をケアされていますか。 A: (副島さん)大人である我々自身が「手伝って」「助けて」と言える仲間をもつことは必須だと思っています。価値づけをされずにゆっくり聞いてもらえる時間があることでエネルギーを回復させることができると思います。

(嶋村さん)子育てをはじめて、どうでもいいけど聞いてほしいっていうことがたくさんあるなと気づきました。多くの子ども、大人と接する仕事なので、誰もいないところで深呼吸したり、一人で映画をみたりする時間を大切にしています。

Q:子どもが宿題ができなくて学校に行けないといっています。 A: (嶋村さん)我が家の9歳の長男とも宿題の話をしていると、今まで見たことのない泣き方をしはじめて驚きました。どうしても「やっているけど終われない。漢字を書くのがつらい」。夜、30分ぐらい抱っこしながら近所を歩きました。一日の中で一回でも、少しでも、子どもの気持ちを抱っこする気持ちを作らなきゃなと思いました。やりたくないことをいやいややらされて人生が終わったらもったいない。それで親子関係が崩れたら、何年も引きずると思いました。

「やっていない宿題もあると思いますが、そのように考えてのことです。どうぞよろしくお願いいたします」と先生にも伝えました。

(副島さん)「学力」って実はいろんな力があります。「学ぼうとしている力」、「学び続ける力」。今大人が考えてる力って「学んだ結果の力」。それは成績をつけるのに便利だからです。でもそこだけにフォーカスしたら子どもは堪らない。子どもの学ぶ力って本当はもっと多様。泣いちゃう心をぎゅーって抱きしめてあげて、学力は本当はたくさんあるんだよ、今あなたはこんな力がついているね、と子どもと確認してみてください。「受容はするけど許容はしない」は、気持ちを受けとめて、鞭をふるってやらせるという意味ではないです。

 学校の先生が自分を評価する人に向いているのか、子どもに向いているのかは大きいなと思います。子どもの気持ちを受けとめてもらいたいなと思います。

■参加者より届いた感想(一部抜粋) ○期待以上の内容でした。めだかさん、副島先生、生駒さん、それぞれのお話が、とことん子どもの真の姿に迫る目線から語られ、それに向き合うときの大人の覚悟、みたいなものにあらためて気づかせてくださいました。嘘のない言葉、子どもだけでなく、私たち自身も「今」をしっかり見つめ、ともに「今」を生きること。自分の感情に目を向けて、自分自身も労ること…。私自身も自粛生活の中で思う存分仕事ができないことの喪失感を味わい、自分自身をケアすることと格闘しました。副島先生のお話をうかがいながら、何度も涙がこぼれ、そのことで癒され、エネルギーをためるスペースを確保できたような気がしています。

○お三方それぞれの経験からお話しされていたこと。めだかさんの息子さんの抱っこの話、人生の時間の話、そえじさんの教員時代の話、今子どもたちを前にしてどんな姿勢でいるかの話、たなちゅうの責めないで行きましょうという先生との話、とてもよかったです〜。

○遊びと教育と各々違う立場で子どもと関わっている人が、でも両方から見て子どもに大事なことが共通しているというのが見えて面白かったです。

○多様な価値観を知り、生きる幅を広げていける。東京に行けなくても、今必要なことが家にいながら学べる。素晴らしいと思います。

○不登校の保護者さんが聞いても、良いヒントになるお話だったと思います。お二人の、押し付けがましくない、普段から真摯に子どもたちと向き合ってらっしゃる姿勢が伝わってきて、聴いてるこちらにストンと落ちてくるお話でした

 

 講座では、他にもいろいろな話題や質疑応答のやりとりがありました。すべては書ききれませんので、興味を持たれたらアーカイブ動画をご覧いただけたらと思います。

アーカイブ動画は、「Tomarigi Online (とまり木オンラインサロン)」に入会いただけますと何度でも視聴いただくことができます。(入会金無料、月額1000円)

→講座での学びをシェアし、ホームエデュケーション家庭やフリースクールどうしの連携を深められるとまり木オンラインサロンは、メンバー募集中です。こちらからどうぞ。

 

<ゲストプロフィール> ●副島賢和 そえじままさかず (昭和大学大学院保健医療学研究科 准教授・学校心理士スーパーバイザー・昭和大学附属病院内学級担当) 1966年福岡県生まれ。昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当。学校心理士スーパーバイザー。大学卒業後、東京都の公立小学校教諭として勤務。1999年より東京学芸大学大学院にて心理学を学び、2006年より8年間、品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。「ホスピタル・クラウン」。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。著書に『あかはなそえじ先生の ひとりじゃないよ:ぼくが院内学級の教師として学んだこと』(学研教育みらい)、『赤はな先生に会いたい!』(金の星社)など。

●嶋村仁志 しまむらひとし 1968年、東京都生まれ。 1996年から羽根木プレーパーク(東京・世田谷)でプレ―リーダーとして子どもと関わる仕事に就き、これまで国内外の遊び場の立ち上げや人材育成等に関わる。前IPA (International Play Association)東アジア副代表(2005~2011)。「すべての子どもが豊かに遊べる東京」を掲げて、一般社団法人TOKYO PLAY を設立。代表理事。9歳と4歳の子の父。

<主催・モデレーター> 生駒知里 いこまちさと(『多様な学びプロジェクト』の運営団体FUTURE DESIGN代表)

神奈川県川崎市在住。2歳から14歳まで6児の母。 「孤独な子に寄り添える大人になりたい」と『川崎市子ども夢パーク』のオープニングスタッフに。出産を機に退職。長男が小1の秋から学校を「辞めた」ことで焦りや不安を感じる日々を過ごし、不登校家庭の心理的・物理的ケアが少ないことを身をもって経験。 「誰もがあきらめない社会」を目指し、子ども達が街を居場所・学び場に活動し「不登校」の社会のイメージを変える『多様な学びプロジェクト』を2017年より始める。上の4人はホームエデュケーション、フリースペースなど学校外の学びの場で育っている。全国の団体や施設と連携して、子ども達の居場所を可視化するとまり木マップを作成中。

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