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プレスリリース:不登校の子どもを育てる保護者に聞いた『不登校のきっかけ』1位は「先生との関係」。保護者の86%が子どもへの対応や将来に「悩んでいる」と回答

【2023年11月16日発信】  特定非営利活動法人多様な学びプロジェクト(代表理事 生駒知里)は、声が届きづらい不登校当事者の実態とニーズを把握するため、「不登校やさみだれ登校の子ども」、「保護者」、「不登校経験者」をそれぞれ対象とする3件の実態・ニーズ調査を2023年10月6日より順次開始しました。この調査結果(速報版)は、このうち「保護者」を対象としたアンケートの令和5年10月13日時点で回答いただいた582人のデータを集計しました。







●調査結果(速報版)の要旨

 「不登校のきっかけ」に関する保護者回答の1位は「先生との関係」、2位は「学校のシステムの問題」でした。文部科学省発表の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(教員回答/1位「(子ども自身の)無気力・不安」)とのギャップがあることがわかりました。

また、保護者の86%(500人)が「子どもへの対応や将来について悩んでいる」ことが明らかとなりました。「行政に望む支援」の1位は「フリースクールなど学校以外の場が無料や利用料減免(75.4%(439人))」でした。

 現在利用している施策に関する保護者の認識について尋ねた項目では、「教育支援センター(適応指導教室)」、「教育相談(行政)」、「スクールカウンセラー」について「利用できるところはあるが利用していない」、「利用したが助けにならなかった」の合計が5割を上回りました。



●速報版の調査概要

・調査タイトル:「不登校の子を育てる保護者のニーズ調査」

・調査期間:2023年10月6日~12月31日 ※速報値は10月13日時点のデータを元に集計

・調査対象:さみだれ登校や不登校のこどもを育てている保護者/元保護者

・調査方法:インターネット調査

・参考情報:

※調査概要(詳細)は最下部に記載



●調査結果(一部の項目を抜粋)


① 不登校になったきっかけ

お子さんが一番最初に学校を休むようになった(休みがちになった)きっかけは何だと考えますか。」という設問(複数回答)に対して、保護者が回答した不登校のきっかけは「先生との関係(先生と合わなかった、先生が怖かったなど」が最多で261人(33.5%)でした。

第2位は「学校システムの問題(価値観が古い、時代に合わない、風土に合わないなど)」で、回答者数は204人(26.2%)でした。※数値は、保護者向けアンケート内で保護者から回答を得た「子ども」777人を分母とした割合です。「子ども」は、現在・過去を含み不登校開始時に小学生~高校生の方としました。

​〈アンケート自由記述設問「お子さんが不登校になったきっかけやその時の様子」の回答より抜粋〉

  • 先生が、いつもピリピリしていて、怒鳴る場面もあり、息子は怯えたり、先生の理不尽な言動に怒ったりしていました。(40代・小6児童の母・小1から不登校)

  • 担任の先生が余裕のない状況の中で、帰りの支度や物事の切り替えがうまくできない息子に対して、小突いたり手を捻ったりと手をあげることが生じました。(40代・小5児童の母・小2から不登校)

  • 学校が忙しすぎる。分刻みのスケジュールで休み時間も着替えや移動に追われ、トイレに行くのがやっと。とにかく急がされるので子供が疲弊している。先生が忙しすぎてその大変さが子供にも伝わる。(小5児童の母・小4から不登校)



② 子どもへの対応や将来への悩み

③子どもが適切な支援先につながっているか


 「現在子どもへの対応または子どもの将来についてどのくらい悩んでいますか?」の設問では、「すごく悩んでいる」と「悩んでいる」、「まあまあ悩んでいる」を合わせると86%(501人)に達しました。

 また、「お子さん本人にとって適切な居場所(学校含む)に出会っていると思いますか?」の設問には「そう思わない(27%)」、「あまりそう思わない(19%)」の合計は46% になり、「すごくそう思う(10%)」、「まあまあそう思う(23%)」の合計33% を上回りました。※元不登校の保護者には「子どもが不登校当時にどのくらい悩んでいたか」に読み替えて回答を依頼。



④保護者が行政に望む支援

 「あなたが行政に望むものを選んでください」の設問(複数回答)では、「フリースクールなど学校以外の場が無料または利用料減免(75.4%(439人))」、「フリースクールなど学校以外の場に通った場合の家庭への金銭的支援(74.2%(432人))」が上位2位を占め、以下「学校が変わってほしい(72.3%(421人))」「学校教員への研修(72.2%(420人))」と続きました。



⑤施策と当事者ニーズとのギャップ

 「教育支援センター(適応指導教室)」の利用状況に関する設問では「利用して助けになった/なっている(19.1%)」の回答がみられた一方で、利用できるところはあるが利用していない(42.3%)」、「利用したが助けにならなかった(15.7%)」の合計は58.0% にのぼりました。

 同様に、「教育相談(行政)」の利用状況については「利用して助けになった/なっている(18.9%)」の回答がみられた一方で、「利用できるところはあるが利用していない(30.8%)」、「利用したが助けにならなかった(24.0%)」の合計は54.8% にのぼりました。

 また、「スクールカウンセラー」の利用状況については「利用して助けになった/なっている(31.5%)」の回答がみられた一方で、「利用できるところはあるが利用していない(22.7%)」、「利用したが助けにならなかった(36.4%)」の合計が59.1% にのぼっており、施設や窓口、専門職の対応に地域や個人の差があり、施策と当事者ニーズとのギャップも生じていることが明らかになりました。

〈アンケート自由記述設問「具体的なエピソードや理由」の回答より抜粋〉


《教育支援センター》

  • 自学自習ができないと入れませんと言われ申し込みも出来ない。(40代・小4,小2児童の母)

  • 支援者が元教員の方が多いからか学校に戻ろうとさせる空気感を感じて行かないと本人が言っています。(40代・中2生徒の母)

  • 私服で自由な時間に行けて帰ることもでき、家とも学校とも違う場に行く事で親子で安心できている。感謝している。(50代・中1生徒の母

《教育相談(行政)》

  • 子供に関わることで助けになった(情報をもらえたり、支援をしてもらえたり)ことがほとんどない。(40代・小4,小2児童の母)

  • その他の学び場、居場所などの情報を何も知らなかった。(40代・小6児童の母)

  • 毎月話を聞いてもらっている。情報ももらえるので助かっている。(30代・小1児童の母)

《スクールカウンセラー》

  • 話を聞くだけで、何もしてくれない。既にこちらの知っている位のことしか情報を持っていない。下手をすると、法令についてこちらが教えるようなこともあり、そんな時は何のためにこの時間を使ったのかと虚しく思い、孤立を感じてしまう。(50代・小5児童の母)

  • 親の考えを受け止めつつ、アドバイスしてくれて今のおかれた状況を、受け止めやすくなった。(40代・中1生徒の母)



●本調査の主催団体代表理事・生駒知里よりコメント

 2023年10月4日に発表された文部科学省発表の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(以下、「令和4年度文科省問題行動等調査」という。)によると、不登校児童生徒は、過去最多の30万人弱と急増し(前年比22%増)、約38.2%の子どもが相談や支援を受けていないとされています。(調査結果はこちら

 今回の調査の特徴は、当事者ニーズと実態を把握するため、学識経験者の助言をもとに「不登校やさみだれ登校の子ども」、「保護者」、「不登校経験者」の対象者別にアンケートを行い、可視化されにくい当事者のニーズを明らかにするとともに、「令和4年度 文科省問題行動等調査」等、これまで可視化されてきた調査結果との比較の視点を含めて分析を行い、政策提案を行う点です。


【不登校になったきっかけの調査結果について】

 保護者が考える「不登校になったきっかけ」の1位は「先生との関係」でしたが、上記速報の自由記述のコメントにもあるように、先生たちの苦しい状況が子どもたちの不登校に影響を及ぼしている様子が垣間見えました。

 文部科学省の「令和3年度 公立学校教職員の人事行政状況調査」結果によれば、精神疾患を理由に病気休職した公立の小中高校、特別支援学校などの教職員数は、過去最多の5,897人(全教育職員数の0.64%)にのぼっており、先生をバックアップする体制の拡充は急務であることが伺えます。


【子どもへの対応や将来への悩み・適切な支援先につながっているかについて】

 「令和4年度文科省問題行動等調査」でも、不登校児童のうち38.2%の子どもたちが適切な支援につながっていないことが明らかになっており、子どもへの対応や将来への悩みを抱えていながらも、適切な支援先に繋がっていない方々を社会全体で支えるための施策や民間団体の動きは喫緊の課題です。


【保護者が行政に望む支援について】

 本速報に含めていない調査項目のなかには、「世帯の経済状況」を伺う項目を設けており、子どもの不登校をきっかけに「収入が減った」、「収入がほぼゼロになった」の合計が34%確認されており、不登校に付随する保護者の経済的な負担が背景にあると考えます。


【施策と当事者ニーズとのギャップについて】

 当事者家庭のニーズに合致する行政サービスや施設を広げていくためには、利用して助けになった行政サービスや施設のエピソードと、利用して助けにならなかった状況や、行政サービスや施設の利用に至っていない理由についても今後本調査で扱い、より具体的な分析を提案内容にまとめてまいりたいと思っております。



●今後の予定

 本調査では、今回速報にまとめた「保護者アンケート」だけでなく、「元不登校経験者アンケート」や、「子どもアンケート」も実施しています(3つの調査の回答期日は2023年12月31日までです)。特に、声が聞こえづらく届きづらい「子ども」や「不登校経験者」の回答をより多く集めたいと思っております。そのため、報道関係者の皆様へは、周知へのご協力をいただけますと幸いです。

 また、来年2024年1月11日(木)にはアンケート結果の報告を兼ねたシンポジウムを開催します。シンポジストは文部科学省担当者、先進自治体の教育委員会、民間居場所運営者、不登校の子どもや保護者、学校教員等を予定しています。


「シンポジウム〜不登校当事者の実態とニーズを把握し、官民共創でつくる効果的な施策とは〜」 (主催:特定非営利活動法人多様な学びプロジェクト/後援:文部科学省)


日時:2024年1月11日(木) 13時半〜16時半

対象:自治体教育委員会、学校関係者、フリースクール等居場所関係者、不登校児童生徒とその保護者、その他興味のある皆様 開催方法:オンライン配信



「​ひとりの小さな声を変える力にしていきたい」を合言葉に、受益者側のニーズに立ったボトムアップの提案を行っていくため、調査に尽力しております。引き続き、回答へのご協力をよろしくお願い致します。



●調査概要(詳細)


「不登校の子どもと保護者、不登校経験者の実態とニーズ調査」


・調査期間:2023年10月6日~12月31日 ※本速報値は10月13日時点のデータを元に集計。

・調査対象:不登校やさみだれ登校の子ども、保護者、不登校経験者

・調査方法:インターネット調査

・主催:特定非営利活動法人多様な学びプロジェクト 

・共同研究調査機関:東京学芸大学 教育学部特別ニーズ教育 教授 加瀬 進

・協力学識経験者(50音順)

  ●朝倉 景樹(TDU-雫穿(てきせん)大学 代表)

  ●伊藤 美奈子(国立大学法人奈良女子大学 教授)

  ●末冨 芳(日本大学 教授)

・調査協力機関:一般社団法人学術・教育総合支援機構

・助成:令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業(WAM 助成)


<調査内容・本リリースに関するお問い合わせ>

調査内容・データ詳細に関するお問い合わせや、報道関係者の取材・お問い合わせ

特定非営利活動法人多様な学びプロジェクト事務局

・担当者:生駒、前北、久保田、高柳

※​月曜から金曜 9:30〜17:00(祝日・年末年始を除く)

速報プレスリリース
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